ダーウィンからギブリバーロードでブルームへ向かう【オーストラリア一周ツーリング その5】
ダーウィン→ブルーム(10月28日〜11月13日)
初めての海外ツーリング。XLV750で乾いた大地を走った24000kmの旅。(1994.6-1995.4)【その5】
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バイク屋で頼んだフレームの溶接と補強がなかなか完成しない
バイク屋でまずフレームの溶接を依頼。この時TT250に乗った日本人ライダーも溶接に一緒について来た。彼もダートでサブフレームが折れたそうだ。二人とも自分で部品を外し、溶接だけしてもらう。オーストラリアは人件費が高いので、自分で出来るところは自分でやったほうが安いのだ。
溶接が完了したところで、サブフレームの補強を頼んでみる。そうしたらバイク屋は落ちている錆びた鉄でやろうとするので、それじゃイヤだと断った。まったく何をしでかすか分からないが、ちゃんと補強できてればいいんでしょ?ということなのだろうか。
バイク屋と相談の結果、スチールの角パイプで作ってもらうことになり、「材料買うから明日来い。まかせておけ。」と言ってくれた。時間だけはあんまりアテにしない方がいいのは経験済みなので、期待は半分だけにしておいた。
それからエンジンのオイル漏れの事も聞いてみた。バイク屋は、「ガスケットがダメだな」と言ったが、事前にキャブレターを外して調べておいたので、「ガスケットじゃない、ねじ自体がダメなんだ。」と説明した。
大丈夫なところまでいじられて、余分なお金は払いたくない。実際余分なお金をとられている人も多いと思う。オーストラリアのバイク屋の決め文句は「カムチェーンがだめだな。」だ。何度この文句を聞いたことか。そう言ってエンジンを開たがるのだ。
そうそうカムチェーンがダメになることはないと思うのだが、重度のトラブルを抱えたバイクはみんなこういわれていた。そしてエンジンを開けた上で、どこが悪いかちゃんと見るのだろう。なら、最初からそういえばいいのに・・・、へんなの!もう自分の行きつけのバイク屋と自分しか信用できない。
翌日、補強を頼みにバイク屋へ行く。「今日は材料が手に入らないから、月曜に来てくれ。」とのこと。やっぱりだ!!あまり期待しなくて良かった。
そして月曜に再びバイク屋へ。まだ材料も買っていないみたいで、補強のいれ方や取り付け方を考えこんでいる。「ダメだウチじゃあ出来ない。他の店を紹介してやる。」などと言うではないか!「まかせとけ!」という言葉も信用できないのか・・・。
まぁ、やってくれるならどこでもいいやと思い紹介された店へ行ってみた。しかし、その後に店を3軒たらいまわしにされたが、結局どこもやってくれない!バイク屋へもどり「おじちゃん、なんとかしてよー。」と頼んでみる。なんとかするから明日来いとのこと。きっとなんとかなるのだろう・・・。
翌日にバイク屋に足を運んでみた。バイク屋のおじちゃんはまた考えこんでいた。彼らは本当に目の前の仕事しか見えないのだろうか?「わかった、材料買っておくから明日来い。」とのこと。本当にわかっているんだろうか?そう言っていれば、そのうち諦めると思っているフシもあるが。
さらに翌日にバイク屋に行ってみた。ここまで連日いっていたらもう半分イヤガラセだが、行かないとやってくれないのがオーストラリアのバイク屋だ。しかし今日はおじちゃんの反応が違い、「材料買っておいたぞー。」と言って自信満々とみせてくれる。
おーいいじゃないか!とバイク屋のおじちゃんを褒めつつも、やっとここまできたかと心のなかでガッツポーズ。材料をカットして加工してバイクに取り付ける。時間にして1時間。こんなことに一週間もの時間を費やしたなんて。
ダーウィンからブルームへ向けて出発
ダーウィンではCT110で旅するライダーと再会ができた。ここで初めて名前を聞く。彼の名前はわかめちゃん。もちろん本名ではない。いろいろ話しをしているうち、出会い帳の話しがでたが、彼も出会い帳はあまり好きではないらしく、あの時俺が住所を聞かなかったことで俺を覚えていてくれたらしい。そういえば彼も俺達の住所はきかなかったな。
でも、以前はは日本で名前とか聞くのが楽しかった時もあった。そういうことを知らない間にしなくなっていた。俺とワカメちゃんは、オーストラリアをバイクで旅する人達の中では、年が上の方なので話しが合うのかもしれない。
ダーウィンではワカメちゃんとよく飲みに行った。彼は日本一周しているので、日本のマイナーな所の話題も話しができた。意外かも知れないが、バイクで日本をあまり回ったことがなくオーストラリアに来ている人が多いのだ。
ワカメちゃんは何日かまえブルームに向かって出発したので、俺も出発日を決めた。今度こそ一人で走りたかった。ほとんど道は一本だし、右回りか左回りで会う人が決まってしまう。それほどみんなのペースが違うわけでもないからなおさら一人になれないのだ。
街でまた会ってしまうのは仕方がないとしても、フレームの補強で思ったより時間がかかったため、道中は一人で走れそうだった。ダーウィンにまだ居なければならないFちゃんや、そして知り合った他の人達に別 れを告げ、ブルームへ向かって旅だった。
一人で旅をすることのメリット
一人で旅をするにはいくつかのメリットがある。まず気ままに移動できること。それからオーストラリアの人々と話しをするチャンスが増えること。何人かで固まっていると、むこうが話しづらいようである。
ケアンズからダーウィンまでを、ほとんど日本人と過ごしてしまったことで、日本人以外との会話が少なかった。せっかくなので、外国人ともいろいろ話したいと思って日本を旅立ったので、このまま日本人とだけ話しているのは絶対に嫌だった。
一人になったことで、効果てきめん!こちらが無理しなくても、オーストラリア人などの外国人が話し掛けて来た。もちろんこちらからも話しかけやすい。みんなでわいわい楽しむのもいいが、一人の旅もやはりいいものだ。
カカドゥ国立公園の壁画
カカドゥ国立公園にはアボリジニの描いた壁画がたくさん残っている。写真でみるのとは一味も二味も違う。表現自体にそれほど感動を覚えなかったし、たぶん日本でその写真を見ても、ほとんどの人は、ふーんそんな絵があるんだ、と思うくらいだと思う。
しかし現地で見ると、壁画の描かれた岩や空間がそこにあり、壁画の描かれたところに生活があったことが感じられる。壁画の描かれた空間に、靴をぬいで一歩ふみだしてみた。石がなんともいえず冷んやりとして気持ちがいい。思わず、今日はここに泊まってみたいと思ってしまった。
もちろんそこには泊まる事は出来ないので、アボリジニがそこで生活し、生きていたという事実を深く感じながらその地を後にした。
ダグラスの温泉の熱いお湯
ノーザンテリトリー州のマタランカは、ガイドブックに載っている有名な温泉だが、そこ以外にも温泉はあった。行ってみたのはダグラスの温泉だ。ダートロードを走って行かなければいけないので、普通の観光客は来ない。そしてダグラスの温泉は、マタランカよりも温度が高く、日本の温泉の感覚でお湯にはいることが出来るという。
マタランカでお湯にはつかったが、熱いお風呂には4か月以上はいっていなかったので、日本の温泉のような温度ということが本当に楽しみだった。行ってみたところ、マタランカよりも水が濁っていたのは今一歩だったが、久しぶりの熱い湯には感動した。お湯は間違いなく熱かった。
ダグラスの温泉にいた、68歳の一周ライダー
ダグラスの温泉には、一オーストラリア人の68才になるライダーがいた。彼はもう15か月もオーストラリアを旅しているそうで、30か月かけてオーストラリアを一周をする予定だそうだ。
ここには3日滞在していて、あと3日位ここにいると言っていたが、後で会ったライダーの話と総合すると、どうやら1か月位ここにいたようである。彼はのんびり自分のペースで旅を楽しんでいた。自分のペースで旅をするのは重要だ。旅ががぜん面白くなる。
ダート区間700kmのギブリバーロードを走る
カナララの先からブルームの手前までダートを使うことにする。ダート区間は700kmのギブリバーロードだ。十分な情報を仕入れ、食料、水、そして予備のガソリンを持ちダートに突入。ダートに入るとすぐに日本ではとても見れないような雄大な景色に遭遇した。この道は正解だった。一人での自由とともに、ダートロードを90km位 で巡航していった。
景色が良いところではすぐに立ち止まりたくなる俺だが、なかなかバイクを止め景色をじっくり眺めようとは思えない。暑いのだ。気温は45〜50度、体に当たる風はまるでドライヤーの風のようで、走っていても暑い。木は少し生えているが、日陰がそれほどあるわけでもない。
それでも1時間ほど走っては必ず休憩を取った。自分の為ではなくバイクの為だ。ここまでも無理せず、バイクをいたわりながら走って来た。オーストラリアを一周したいのだ。
ギブリバーロードは、砂がないだけマシな道だ。しかしバイクにとっては酷な道だった。コルゲーションと呼ばれる洗濯板が地面にあるような道で、これがひどい震動を生み出していた。スピードをある程度上げないとより酷い震動になるので、スピードはそれなりに速いのだが、フレームを心配しながらの行進だった。
オーストラリア一周は、ツーリングというより耐久レースをしているような感覚だ。楽しい事もあれば、辛い事もある。トラブルが襲ってきて辛いときもあるが、バイクをおりずにツーリングを続けるのはなぜだろう。
道ばたのブッシュでキャンプを張り、朝一番でガソリンスタンドへ行った。ガソリンがなければ先へは進めないので、スタンドのオープンと同時に何台もの車がやって来る。こいつらいったい何処にいたんだ?と思った。昨日は対向車を2台しか見ていないのに、とても不思議に感じた。
サブフレームが再び折れた
またもやフレームのトラブルが再発した。ダーウィンの街で修理した溶接箇所が弱かったらしく、同じところが再び折れた。補強の棒をいれておいたので、その棒がつっかえ棒になって、テールや荷物が落ちることは無いのが幸いだ。
違う形で役立ってしまった補強の棒を見ながら、やれやれまたか、まあ気楽にやるしかない、と苦笑いした。スパナと針金で、骨折を直す要領で折れた箇所を修理する。もうこの処置は手慣れたもの。なにしろ2回目なんだから。
バイクから荷物がおろされシート等が外されている時に3台の車が素通りした。どう見たって俺はトラブっているのに、冷たいもんだなと思った。自分で修理が出来るのだから、いちいち止まられて聞かれるのもめんどくさいが、グチの一つでも言ってみたくなった。
ワカメちゃんと3度目の再会
ダートを走り終えて、ダービーという町のキャラバンパークにたどりつき、テントサイトへ行く。そこには、見たことのあるバイクがあった。ワカメちゃんだ。俺はニヤニヤしながら声をかけた。
「よー、ギブリバーロード通ったろー!」「えっ、なんで知ってるのー」「だって道路の端にクネクネしたタイヤの跡を見たもん。」「あははははは。」
彼のバイクで、あのダートは大変だったろうと思ったので道の事を聞いてみた。
「ギブリバーどうだった?」「最高に辛かったよー。すぐオーバーヒートするの。10分走ってもう休憩したりしたよ。コルゲーションもすごかったよね。」
10分で休憩とは!もちろんずっとではないだろうが、洗濯板状のコルゲーションが酷いところでは、それだけパワーを吸い取られてしまうようだった。しかしなんだかんだ言っても嬉しそうに話すので、走り抜けた満足感のほうが大きいように見えた。
俺はこの道を一泊で通ってしまったが、彼は一週間かっかって通り抜けたそうだ。俺はあんな単調な道を一週間もかけて走りたいとは思わないが、世の中こういう奴がいるのが非常に面白い。
ブルームに到着
ワカメちゃんとは巡航速度が違うので、街での再会を約束して出発。この先はブルームまで舗装路なので、何の問題もなくブルームの町に到着した。キャンプばかりしてきたので、町での滞在は安宿にした。疲れを取る目的もあるが、町では誰かと話せたほうがきっと楽しいだろうし。
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